OverTheBorder

全てはある白昼夢から始まった……Ei Wadaが突き進む“Over The Border”

既存の枠組みに縛られることなく、音楽とアートの狭間を行くEi Wadaが語る全ての始まり、知られざるルーツとは?

失われゆく電化製品を楽器へと変換し、音楽を生み出す。そんな“Over The Border”なパフォーマンスで活躍するEi Wada。
先の『BACARDÍ “Over The Border” Launch Party』では、ブラウン管テレビを使ったEi Wada’s Braun Tube Jazz Bandで観衆を魅了。その独創的なステージはまさに既存の概念を超え、共演者たちにも大きな影響を与えた。
そんなEi Wadaの活動の根源となっているのは、若かりしころに見たというある白昼夢、それも蟹の奇祭という世にあるまじきものだった……。

——あなたにとって“Over The Border(概念を超えること)”とは?

 

「造語を作るような感じかもしれないですね。人間は言葉を使って世界を区切り、境界を作ることでものごとを認識していますよね。それがないと全てがカオス、混沌とした世界になってしまうのですが、何か新しい造語のようなものを作って世界を俯瞰してみると、また違った世界が見えてくる。そこに新たな関係性が生まれることがあると思うんです。僕はどうしても表現できないもの、既存の言葉では現せないものに出会ったときに造語をよく使います。例えば、東南アジアに行くとお寺がビカビカと光っていたりするんですよ。それを言葉で現したいと思ったときに浮かんだのが“ライライ・ジャイーラ”(笑)。その他にも丸くてプニュプニュしているユーモラスな動きのするものを “むーにょ”って呼んでいます。そう呼ぶことで、全く関係ないもの同士が、結ばれたりするのが面白いなと思っています。それがひょっとしたら今ある境界を超えることになるかもしれない、そう思っています」

 

——今回『BACARDÍ “Over The Border” Launch Party』に出演されて率直な感想は?

 

「Ei Wada’s Braun Tube Jazz Bandではブラウン管から出る静電気を手でキャッチして演奏しているのですが、ここまで爆音で演奏できたことは素直に嬉しかったですね。自宅でやると近所迷惑になることがあるので、それが合法的にできるというのは嬉しい限りです(笑)。ブラウン管テレビというのは今や日常からは撤退の一途を辿っている存在だと思うのですが、そこから出る断末魔みたいなものでみなさんが楽しんでくれたことは最高でした。今後もぜひ継続していきたいですね。そして、是非また出たいですね。他にもいろいろな楽器をつくっています。例えばボーダーシャツを演奏するボーダーシャツァイザーという電子楽器は、ボーダーを超えますよ(笑)」

 

——今はどれぐらいのプロジェクトを行なっているんですか? ブラウン管テレビを使ったこのプロジェクト以外にも、Open Reel Ensembleやエレクトロニコス・ファンタスティコス!などたくさんあるようですが。

 

「正直、もうわけがわかならくなってきています(笑)。 音楽、美術、その両方とも言える領域で活動を続けています」

 

——各プロジェクトはどのようにしてスタートするんですか?

 

「瞬間的なアイディアで生まれたものもありますし、その中から長い時間をかけて成長していくものもあります。とはいえ、最初は衝動の発症に他ならないですね。そこに仲間が集ってきて、色んなことが実体化されていく日々を送っています」

 

——今回ステージを拝見して、Wadaさんのパフォーマンスは音楽とアートが交錯するこのイベントにぴったりだなと思いました。

 

「音楽とアートの組み合わせは、僕にとってはかなりありがたいですね。僕がやっていること自体、音楽と美術の狭間にあるような表現なので。『BACARDÍ “Over The Border”』のような場所でやることがとてもしっくり来る感じがしました。もはや、そのような線引きは意識の外へと飛んでいく、そんなイベントが当たり前のことになるといいなと思ってます」

——音楽とアートの狭間にいると言いますが、それはどちらか一方ではダメだったんですか?

 

「ゴマでも塩でもなく、やっぱりゴマ塩が好きなんですよね(笑)。僕はもともと音楽から、テープレコーダーで多重録音するところから表現活動が始まっているんですけど……なぜ音楽をやろうと思ったかと言えば、ある妄想のせいなんです。十代の始めのころ、白昼夢のようなものを見まして。巨大な蟹の足がそびえ立つ場所で音楽の奇祭が行なわれている、そんなビジョンだったんです。そして、そこにある蟹の胴体にはブラウン管テレビが埋め込まれていました」

 

——もしかして……それがEi Wada’s Braun Tube Jazz Bandのルーツ?

 

「当時、その蟹はブラウン管テレビを使って喋ることができるという妄想でした。そして、それはエレクトロな奇祭の司祭のようなものだったんです。それが僕の中にずっと渦巻いていたのですが、その10年後ぐらいにブラウン管から電気的に音が出るという原理を見つけて。そのときは“あの蟹足がここに!”ってテンションがあがったことを覚えてます。意味わからないですよね(笑)」

 

——若干、怖い部分も感じますが……。

 

「ですよね……(笑)。一時期、本気で物語とか書いていたんですけど、ブラウン管から音が出ることを知った後は、全てが繋がった感覚があって。僕があの音楽祭を開くしかないかな、と思うようになりました」

——ブラウン管を叩いて音を出すというのは、ある種すごくプリミティブな行為でもありますよね。

 

「かもしれないですね。でもそれがすごくしっくりきたんですよ。特にあの蟹の世界を表現するツールとして。ただ、Open Reel Ensembleにしても、僕はギターを弾くよりもギターの音を録音した磁気テープの方をぐにゃ〜といじる方が表現するためのツールになったりするんです。あくまで僕の中でですけど(笑)」

 

——ブラウン管やオープンリールなど、Wadaさん自身は今は使われなくなった、過去の遺物的なものに興味があるんですか?

 

「それは自分の中でも全く言語化できていなくて……。実は後付けだったりするんですけど、かつてのテクノロジーが持っている操作感だったり、そこから生まれる音色にある種のゆらぎだったり、なんとも言えない魅力があるんですよね」

 

——それは楽器にしてもそうですよね。あえてヴィンテージを使う方も多いですし。それでしか出ない音があるわけで。

 

「ブラウン管テレビにも、そのビカビカした光と音の独特の魔力があって。そういったことをやっているうちに音楽とアートの狭間にきてしまったというか、ビジュアルアート、パフォーミングアート的な要素が加わって、身体を使った演奏をする電子楽器として失われゆくものと交流しているんです」

 

——音楽面だけみると、ものすごく不自由な部分も多いと思うんですが。

 

「人類の長い歴史の中で開発してきた楽器と比べれば太刀打ちできないところは多々あるのですが、それでもこれを選ぶというのはやっぱり好奇心由来の病気としか言えないかもしれないですね(笑)」

 

——そのスタンスは今後も変わらない?

 

「全ては衝動だと思うんです。おそらく止められてもやる(笑)。蟹の話も話すとだいたいきょとんとされますが世界は広いのできっとどこかにあるはずという感覚にどうしようもないワクワク感みたいなものを感じていて、気付くとやっちゃっているんですよね」

——今回のイベントで印象に残ったものや影響を受けたものはありました?

 

「基本的にはみなさんがどんな症状を抱えているのか気になっちゃって(笑)。アートに携わる方ってどこかどうしようもなくやっているところが多少なりあると思うんです。そして、それが受け入れられれば幸せだし、全く受け入れられないこともある。そんな中で、自分の症例に近い人がいるとやっぱりシンパシーを感じますし、なかには全く理解できない病状もあるんですけど(笑)。なので、みんながなぜそこに取り付かれてしまったのか、そこに興味がありますね」

 

——もしかしたらWadaさんが見たような蟹体験がみんなにもあるかもしれないと。

 

「きっとあるんだと思います。その体験や妄想とどういう風に1人1人が向き合って、どんな風に作品として出しているのか、それはとても興味深いですね。そういうテーマで本をつくって欲しいくらいです」

 

——Wadaさんが今後、人生をかけてやってみたいことは?

 

「蟹の建造ですね(笑)。もはや近いことはやり始めているんです。本当は老後の楽しみにとっておきたかったんですが、その話をしたらやってみる? っていう奇特な方がいて。あとは、電化製品による楽団でミュージカルやロック・オペラのような音楽を作り上げたいという妄想もあったり。ただ、今次に考えているのは盆踊りなんですけどね(笑)」

 

——また意味深な……。普通の盆踊りではないんですよね。

 

「通電したり、人の動きがシーケンスになったりする、電磁化された盆踊りの実現に向けて動いてますね。古くなったテクノロジーの供養と蘇生を、あの世とこの世を繋ぐ盆通りと重ね合わせて。イタコが電気製品を呼んだり……」

 

——イタコまで出てくるんですか?

 

「すみません……それは思いつきです(笑)」

 

——最後に挑戦し続ける若いクリエイターやアーティストにアドバイスをお願いします。

 

「若いときにしかできないことはたくさんあるので、ぜひやんちゃをしてほしいなと思いますね。そして、ぜひ「BACARDÍ “Over The Border”」でもやんちゃな企画を続けていってほしいです!」

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