OverTheBorder

エレクトロニックミュージックの新たな表現の模索の果てに……

日々進化するライヴの世界において、大いなるパラダイムシフトを起こしたAmon Tobinの「ISAM Live」とは……。

いまやアーティストにとって“ライヴ”は最も重要な自己表現の場のひとつ。

血のにじむ思いで生み出した楽曲をいかにライヴで魅せるか。楽曲単体では伝えることのできない作者の世界観や考え、すべてを伝える場所がライヴであり、そこはファンと時間や空間、そして思いを共有できる唯一の場所でもある。さらにはアーティストにおける実験の場としても有効で、そこからまた新たなものが生まれている。

 

一方、市場的に見ても現在は楽曲のセールス以上にライヴ(興行)が重視され、その規模感は日増しに拡大。世界各地で行なわれているライヴやフェスにおけるステージの造作や演出は絶えず進化し続けている。いわば、現代のエンターテイメントの粋を極めたといっても過言ではないライヴだが、では今誰のステージが見てみたいかと言えば……そのひとりに挙げられるのはAmon Tobin。

 

なぜ彼なのか……もちろん世に名だたる愛しのポップスターや輝かしきEDMスターのエンターテインメント性に溢れるライヴもいい。しかし、Amon Tobinのライヴはその希少性もあるが、何よりその表現方法が既存の概念を超えている。そこでは他では感じられない、えも言われぬ別格の世界観があるのだ。

 

彼はブラジルに生まれ、ダンスミュージック大国UKで育ち、1990年代から活動を開始。UKが誇る老舗レーベルNINJA TUNEに所属し、シーン屈指の個性派を数多く擁する同レーベルの中でも一際異彩を放ち、その独創的なサウンドは世界中のアーティストに多大な影響を与えてきた。また、エレクトリック・ミュージックだけでなく映画や舞台、さらにはゲームの音楽なども手掛け、なおかつ坂本龍一やフィリップ・グラスといった著名な現代音楽家たちとコラボするなど、あらゆる音楽分野でその名を轟かせている。

しかし、そんな多岐にわたる活動の中でもライヴにこそ彼の本質や並々ならぬ思いが込められている。とりわけ、2011年にリリースされたAmon Tobinの最高傑作と名高いアルバム「ISAM」を機に展開されたオーディオヴィジュアル・パフォーマンス「ISAM Live」は世界中の音楽ファンの度肝を抜いた。巨大なセットの中に組み込まれたキューブ型のブースにAmon Tobinが乗り込み、自らのライヴ音源と映像、当時の最先端でもあったプロジェクションマッピングを同期させ、圧倒的な世界観で観るものの期待を凌駕した。

 

もともと彼のサウンド自体、テクノやIDM、さらにはジャズやドラムンベース、あらゆる音楽性が交錯した独特なもの。しかも、「ISAM」はその中でも特に様々なマテリアルをデザインしたかのような、決して踊るという概念に捕われない、もはやアートの領域に近い音楽。それが、緻密に練り上げられた映像とシンクロすることで視覚と聴覚を同時に刺激し、より高度なアートフォームへと変貌。ここ日本でも2012年に「electraglide」でそのステージを披露していたが、それはそれは興味深いものだった。

Amon Tobinは、「ISAM Live」はエレクトロニックミュージックの新たな表現方法を模索していたなかで辿り着いたひとつの形だと話しているが、誕生した2011年当時にしてみれば確実に革新的な代物だった。そして、その後多くのアーティストがそれを追随することでライヴは進化。しかし、それでも「ISAM Live」は今なおマスターピースとして世界中を驚かせ続けている。まさに“Over The Border”=既存の概念を超えた「ISAM Live」。とはいえ、ファンの本音としてみればそろそろ彼の新たなパフォーマンスが観たいところ。Amon Tobinが再び世界を圧倒してくれるその日を楽しみに待ちたい。

Recommend Posts

Related Posts

Popular Posts